沖縄県中小企業家同友会観光関連部会_守礼ネット会
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「観光危機管理」をテーマに9月例会を開催。
サイト管理人
2011年 11月 10日(木曜日)
守礼ネット会9月例会
「東日本大震災から半年、今、改めて沖縄の観光危機管理について考える」
講師:高松正人(たかまつ・まさと)氏

 

本年3月11日の東日本大震災は、観光関連のみならず沖縄の企業経営者すべてに重大な課題をつきつけるものでした。
沖縄で大規模な津波や地震が起きたらどうなるのか。緊急時に備えた計画づくりや訓練をどこまでできるのか。
個々の企業まかせでは、県内の中小零細業者にとって荷が重すぎる問題です。企業が協力しあい知恵を出しあって、沖縄経済界が全体で危機管理に取り組む必要があります。

守礼ネット会では、今後の長期にわたるテーマとして「危機管理」の問題に取り組んでいくことを決めています。(参照リンク:みんなで作る危機管理マニュアル
危機管理に関する最初の試みとして開催されたのが、今回の9月例会です。

例会は、2011年9月6日(火)午後6時より、沖縄産業支援センターにて開催されました。
講師として、株式会社ツーリズム・マーケティング研究所の高松正人社長をお招きしました。高松氏は日本や世界各国の観光危機管理について調査して提言活動を続けておられます。沖縄県主催の観光危機管理セミナー(6月)でも講演をされました。

まず冒頭、高松氏は「危機」という漢字について“危険な事態を機会(チャンス)に変える”と読み替えて、観光業者を危機に強く大きくしていくチャンスにしましょうと呼びかけました。

 

1.沖縄にとって観光危機管理がなぜ必要か
沖縄にとって観光は基幹産業であり、観光危機管理に取り組むことが重要だと高松氏は語ります。
災害が起きたとき、観光客の安全を確保して無事に自宅に帰れるよう支援できれば、「安全・安心な観光地=沖縄」のブランドづくりにつながり、沖縄の観光産業の発展につながります。
さらに被災後、いち早く観光の復活にむけたアクションを開始することが、沖縄の雇用と生活を守ることになります。
 
起こることが想定されうる災害・危機
 
自然災害・危機
台風・大雨・洪水/干害・異常高温/地震・津波
 
人的被害・危機
大火災・ホテル火災/大規模交通事故/航空機事故・ハイジャック/船舶事故/伝染病・大規模食中毒/テロ/重火器・刃物等による凶悪犯罪/他国 による武力攻撃/放射能事故(核兵器、原子力船艦)/大規模停電

 

2.観光危機管理の特徴
地元の住民を対象とした場合とは違って、観光客を対象とした危機管理には難しい点があります。観光客は、地元に馴染みが無く、土地勘がありません。外国人など、コミュニュケーションがうまくできないこともあります。さらに観光客は、災害後に安全な避難場所にとどまることよりも、早く自宅・自国に帰ることを希望します。
民間企業と行政との連携も重要になります。どんな観光客が来ているのか知っているのは観光業者(ホテル・旅行会社)だけで、行政機関は救護すべき観光客を把握していないことが多いためです。


3.沖縄観光危機管理の現状

沖縄県は地域防災計画を作成し、ホームページでも閲覧できるようになっています。各市町村でも、ばらつきはあるものの防災計画が作成されています。しかし観光客を対象にした検討は少なく、抽象的な努力目標が書かれているだけのものが多いので、実際に災害が起きたときにはとまどうことだらけでしょう。たとえば…

  • ・医療品や食料の備蓄は、どれくらいの量が必要なのか。自治体がおこなうのか、ホテルなど事業者がおこなうのか。
  • ・外国人が病気や怪我をしたとき、医療費は誰が負担するのか。
  • ・帰れなくなった旅行者をどうやって帰すのか。パスポートなどを紛失した人への対応はどうするのか。
  • ・外国人旅行者の場合、外国領事館との折衝は誰がおこなうのか。
  • ・亡くなった人の遺体の管理は誰がするのか。他宗教の人を日本式の方法で火葬してもいいのか。
…などなど、問題点がたくさんあります。
 


4.観光危機管理の実践例

  ●JR東日本の場合
東日本大震災のとき、約2万人がJR東日本を利用していましたが死傷者はゼロでした。 JR東日本では独自の地震予知システムを備えており、気象庁の地震予知速報よりも1秒早く電車の緊急停止を始めることができました。1秒早く減速できるかどうかは、災害時には重大な違いとなります。
津波でローカル線の電車が流されましたが、津波に備えて乗務員が乗客を下車させて高台に誘導したおかげで、人的な被害は逃れました。 安全のためのシステムとインフラの投資、綿密な安全管理マニュアルの作成、繰り返し行われる訓練などが効果を発揮しました。
 

●東京ディズニーリゾート(オリエンタルランド)の場合

東京ディズニーランドと東京ディズニーシーでは、東日本大震災の発生時に7万人以上のゲストがいました。地震が起きるとアトラクションを緊急停止して避難誘導したことにより、ゲストの死傷者はゼロでした。
地震当日の夜は、電車が止まったためゲスト2万人以上がパーク内に泊まりましたが、それぞれのキャスト(従業員)が自分の判断で支援活動をしました。ゲストの様子に気を配り、防寒のために商品のタオルを支給したり、食料を配布しました。暗くなってきたら「ゲームをしましょうか」と話しかけ、ゲストの不安を取り除いたキャストもいました。
東京ディズニーリゾートでは、Safety(安全)を最高の優先事項とする行動指針が徹底されていました。安全のためには、売り物であってもゲストに無償で提供するという判断をキャスト一人ひとりができたのも、この指針が浸透していたおかげです。年間180日におよぶ安全訓練も成果を発揮しました。

 

●2004年スマトラ地震・津波から学ぶこと

2004年のスマトラ島沖地震では、リゾート地として知られるタイのプーケットでも大きな被害がありました。たくさんの外国人旅行者が被災しましたが、このとき優れた危機対応をおこなったことにより、プーケットは高く評価されることになりました。
地元の民間病院は、在住外国人や観光客を無料で治療しました。病院は避難所でもあり、行方不明者の情報センターの役割も果たしました。
地震後にはスウェーデン国王がプーケットを訪れて、県庁や病院による自国民への救援活動に感謝を述べました。プーケットの評判はさらに上がり、北欧からの観光客は災害前よりも増えました。
プーケットでは、国際的な観光機関を巻きこんで復興プランをつくり、世界中に情報発信をしました。「ここまで復興した」との情報を詳しく発信することにより、各国の渡航自粛がすぐ解かれることにつながりました。
被災した観光関連の中小企業への資金援助が早かったことも特徴です。復興のなかで企業へのIT導入などをすすめたり、休業期間を従業員への教育トレーニングに活用するなど、観光業の成長につながるよう計画を進めました。

 

5.沖縄の企業・自治体に求められること

皆さんも、いまの自分たちの危機管理計画がどうなっているか把握しなおすことから始めてみてください。限定された災害しか想定してないのではないか、外国人への対応など不足はないかなど、さまざまな問題点を書きだして、プランに反映させていく必要があります。
ぜひ「安全・安心な沖縄」というブランドを皆さんの手でつくりだしてください。

 


6.議論が白熱したグループ討論

高松氏の講演を受けて、「わが社の危機管理」をテーマにして参加者によるグループ討論が行われました。
「東日本大震災のあと、海岸沿いの堤防を眺めながら、津波が来たらどうしようと考えこんでしまった」
「災害時に、地域の情報を集中できるセンターがオールオキナワで必要だと思う」
など、さまざまな意見・感想が出されました。

危機管理マニュアルについては
「災害時に得意先に納品している製品が故障などしたときに備えて、行動予定表が必要だと感じた」
「自分のところの会社は少人数だから、もし自分が災害で怪我などして動けなくなったら得意先へ連絡する人間がいなくなってしまう。だから知り合いの会社に協力してもらい、連絡先の名簿も渡して、いざというときに自分の代わりに連絡してもらえるようにしている」
「同友会の各地区の担当者が災害時の連絡センターになって、地域をまとめる役割を果たせないか」
などの意見が出されました。

個々の中小零細企業が独自で危機管理マニュアルなどを作成していくのは大変なので、同友会全体で危機管理マニュアルづくりをすすめて、それを各会員が自社にあわせてカスタマイズして利用するようにできないかという意見がありました。守礼ネット会でも危機管理マニュアルづくりを率先して進めていこうということになりました。

例会終了後は、高松氏をかこんで懇親会を開きました。充実した内容の講演をしていただいたことに感謝して、守礼ネット会として沖縄の観光危機管理に長期的に取り組むことを約束しました。

 【参考リンク】
みんなで作る危機管理マニュアル(守礼ネット会サイト内ページ)
株式会社ツーリズムマーケティング研究所
沖縄県 知事公室 防災危機管理課
沖縄県地域防災計画
 

講師プロフィール
 
株式会社ツーリズムマーケティング研究所
社長 高松正人氏

【専門】
訪日観光、海外旅行、宿泊施設、観光施設、観光戦略、国内旅行
企業経営戦略を観光に応用する理論派コンサルタント。最近は、海外市場に視点を置いたインバウンド関連の業務が多い。
国内外での講演やセミナー講師としても幅広く活躍。
 

【略歴】
・1982年、JTBに入社。団体旅行営業、販売促進、インセンティブトラベル企画、人事企画、経営企画、ITなどの業務を担当。
2000年、当社の設立準備に従事し、2001年マーケティング事業部長。2009年から現職。観光専門家として世界観光機構(UNWTO)にも参画するなど、国内外で幅広く活用。東京大学教育学部卒。

・UNWTO World Tourism Barometer パネル(2007年~)、フランス観光開発機構 国際アドバイザー(2008年~)長崎県 観光審議委員(2009年~)、沖縄県 文化資源活用型観光戦略モデル策定事業委員(2009年~)、成田市 成田空港成長戦略会議委員(2010年~)、琉球大学観光産業科学部 非常勤講師(2010年~)

 

 
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